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国内政治と国際政治の相互作用

 「国際連合が冷戦という行き詰まりから解き放たれ、創設者たちの歴史観を貫徹させる用意を整えるに至った。自由と人権の尊重がすべての国家で実現する」。これは1991年3月6日ジョージ・W・ブッシュ大統領が宣言した言葉である。冷戦終結後のグローバル化・地域統合の深化は、国際連合を中心とした多国間制度への期待を高め、世界がより密接につながる時代の到来を私たちに予感させた。

しかし、その期待は急速に揺らいでいく。むしろグローバル化に対する反動が各地で強まっている。  新型コロナウイルスの世界的流行によって、私たちはグローバル化の恩恵だけでなく、その弱点を突きつけられた。サプライチェーンは途切れ、医療資源は不足し、相互依存はむしろ各国の脆さを露わにした。そしてワクチン外交が示したのは、国際政治の力学が国内の医療体制や産業基盤と切り離せなくなった現実である。国際問題が国内政策に影響を与えるだけでなく、国内の医療体制や産業力が外交上の力として外部に作用するという国際政治と国内政治が相互に作用し合う関係を際立たせた。
 
 さらに、現在象徴的なのが排外主義的政策や極右政党への支持の拡大である。欧米では、経済格差の拡大や移民への不満が強まり、既存エリートへの不信がポピュリズムの台頭を招いている。イギリスのEU離脱は地域統合の理念そのものへの挑戦となった。アメリカではトランプ政権が「自国第一主義」を掲げ、国際協調より国内利益を優先する姿勢が強まった。加えて、南アジアや中東、アフリカなどでも国際市場への不満や既存エリートへの不信を背景に、強力な統治を掲げる指導者への支持が高まっている。また、BRICSをはじめとする新興国グループの存在感が高まるなかで、国際秩序そのものが多極化している。従来の欧米中心の国際協調の枠組みは揺らぎ、地域統合や国際制度の持続可能性にも新たな課題が突きつけられている。

 しかし、グローバル化への反動が強まる一方で、気候変動、パンデミック、食料・エネルギー安全保障、移民・難民問題など国境を越える課題はむしろ深刻化している。個々の国家が独自に対応することは難しく国際協調の必要性は高まるが、国内政治の分断などがその実現を妨げている。

  いま、私たちは問われている。
  世界は本当に、持続的な協調へと向かうことができるのか。
  それとも国家という枠組みの限界に縛られ、分断と対立の時代へ戻ってしまうのか。
  私たちは、この変わりゆく世界をどのように理解し、どのような秩序を望むのだろうか。

 
 54期十大学合同セミナーは、「国内政治と国際政治の相互作用」というテーマのもと、これらの問いに真正面から挑む。具体的には各セクションで具体的な事例研究を通して、「国内政治」と「国際政治」がいかに影響を与え合っているのかを分析し、秩序・国家・協調のあり方を議論する。その過程の中で、地域による問題・認識の違い、過去・現在・未来へと進む時代の認識、各セクションの固有の問題の特徴、などへの理解を深めていくことが予想される。また、十大学合同セミナー特有の「学生の視点」を大切にした理論や事例の選択・分析・研究方針を拓いていくことを目指す。

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軍事セクション

54期セクション

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 昨今の紛争の影響は戦争当事国だけでなく、国際秩序全体に波及している。安全保障の行動主体が国家であることを踏まえて国内政治と国際政治が軍事に与える影響を分析し、その相互作用がもたらす安全保障の在り方について考察してほしい。

©ERNESTO BENAVIDES / AFP

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​経済セクション

54期セクション

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 トランプ政権の関税政策は世界経済の構造を揺るがした。大国が形成してきた経済形態が大きく変化する中、グローバルサウスや多国籍企業といった新興勢力の台頭が進んでいる。国内や国外、多様なアクターの視点から国際経済を考えてほしい。

©JUSTIN SULLIVAN / GETTY IMAGES NORTH AMERICA / Getty Images via AFP

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​移民難民セクション

54期セクション

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 国境を越える人の移動は紛争の拡大や労働市場の国際化といったグローバルな事象の影響を大きく受ける一方、各国の移民難民に対する政策は国内の状況に応じて決定される。移民難民という存在において、国内政治と国際政治とはどのように影響しあっているだろうか。

©Omar AL-QATTAA / AFP

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ナショナリズムセクション

54期セクション

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 国民の共通性を主張するナショナリズムは、グローバル化の潮流と対立する部分が大きくなっている一方、国内の一体性を高める理念としては影響力を保っている。国際社会と密接に結びついている国家のあり方について議論してもらいたい。

©John McDonnell / GETTY IMAGES NORTH AMERICA / Getty Images via AFP

​開発セクション

54期セクション

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 開発は人間の生活の基盤を築くという意味合いで使われている。しかし開発支援が効果的かという議論は絶えず存在する。援助国の中には開発援助を背景に影響力を強める動きや開発援助に対する否定的な意見も見られる。揺れ動く開発について多角的な検討を行ってほしい。
 

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